8月4日 仙台市新浜 海への足「みんなの舟」 貞山運河で進水

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仙台市宮城野区新浜は震災後海岸にもっとも近い集落になった。近隣の荒浜地区などが災害危険区域に指定されたためだ。ところが海岸へのアクセスが絶たれた。貞山運河を渡る民間業者の橋が流されたためである。
海への足として「みんなの舟」が作られ、貞山運河で進水式が行われた。フランスを拠点に国際的に活躍するアーテイスト、川俣正さん(65)が製作した。仙台メデイアテークが主催する「せんだいアートノード」の事業の一つだ。被災地とアーティストをつなごうというもの。

川俣さんはフランス国立高等美術学校の教授。東京・代官山の「工事中」など、街中に木材をつかった構造物をつくるなどの作品で知られる。流された橋の設計に関わった。しかし、これは予算の関係などで実現には時間がかかるので、舟を作ろうとなった。

2日前、製作の現場を訪れた。舟の骨格となる素材は発泡プラステックの断熱材。サーフボードの素材としても使われるというが、果たして浮くのか心許なかった。この日はフランスから来た青年などが液状になったFRPを塗る作業がしていた。シンナーの匂いで長時間はいられなかった。
川俣さん。冗談交じりに「「舟の作品つくるのは5例目だが、本当に浮くのかな?」。
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進水式は本格的だった。くす玉を割ったあと、お酒や塩を振りかけ、安全を祈願する。長さ6メートル、幅1・5メートル、ほぼ長方形の「みんなの舟」が貞山運河に浮かんだ。構造的にはFRP船と同じ原理。船底は浅く、かつてこの地区で貞山運河を行き来していた「馬船(うまぶね)」を模したという。塗装は黒で仕上げた。

運河の両岸に渡したロープを引っ張って対岸に渡る。この日参加した60人余りが「みんなの舟」で運河を渡って海岸に足を運んだ。
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写真上;手前が木造の「馬船」。下:川俣正さん。左側がオリビエ・デビュさん。
この日は、井土浜の元住民、加藤新一さんが自力でつくった木造の「馬船」や、閖上地区で使われていた和船「さぐば」を復元した舟も集まった。和船で櫓をこぐ体験も行われた。

この後、新浜地区の集会所で貞山運河や仙台湾の海岸をどう再生するかをテーマにワークショップが開かれた。
フランスから参加した建築家のオリビエ・デビュ(Olivier Debu)さんが提案した。
「貞山運河は大きな遺産だ。舟で周遊できるよう、主な地点には船着き場を兼ねた、観光施設をつくってはどうか。海辺は住宅の建設が禁止されているが、あずまやや休憩施設は建設できる」。
川俣正さんはこう強調した。
「海辺をどう再生させるかについて、私のようにこの地区を知らなかった人も含めて様々な意見や、アイデアを言い合うことで展望が開けてくる。舟を黒で着色したのは「黒船」、つまりよそもののアイデイアという意味を込めた」。
日本最長の運河、貞山運河。居住できなくなった仙台湾岸の再生。様々な提言は貴重だし、大いに啓発される。
もっと大事なのは、こうした貴重な遺産に恵まれている地元の行政や、住民、企業などがどう取り組むかではないだろうか。(了)

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