3月11日 Intermezzo 震災から11年 「モーツアルト・レクイエム」 心をひとつに 祈りをともにする

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3月17日記。
昨夜は寝入りばなの揺れでした。緊急地震速報にはね起きてベランダの窓を開けました。収まりかけたら今度はもっと大きな揺れ。ベッドに手をついて揺れに耐えていました。11年前のあの時と同じくらいの揺れでしたが、時間は半分ほど。「これなら大丈夫かな」3・11を経験した者のDNAでしょうか。つい、あの時との比較で考えてしまいます。
我が家は2階を中心に本などが飛び出した程度ですみましたが、被害の大きかった方々にお見舞い申し上げます。外へ出ると町内会の役員が見回りをしていました。あの時以来の習わしです。

東日本大震災から11年目の3月11日、私たちは「祈りのコンサート」を行いました。「震災を忘れない・忘れさせない」2014年から続けているもので通算9回目です。出演者のほとんどがボランテイア奉仕。できるだけ多くの方々と祈りをともにしたいという願いから入場無料です。一昨年はコロナ禍で中止せざるをえませんでした。今回もオミクロン株が猛威を振るっており中止論もありましたが、ステージ、客席とも感染予防策を徹底することで開催にこぎつけました。

震災の発生した午後2時46分、会場の全員が1分間の黙とうを捧げました。続いてモーツアルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。短いが晩年の傑作です。指揮はテノール歌手で岩手大学名誉教授の佐々木正利さん。『まことの御身よ(イエス・キリスト)臨終の試練の時も、私たちと結びついていてください』静かな祈りがホールに響きわたりました。
あの日、多くの人々が冷たい黒い波に呑み込まれ、生き残った私たちも激しい揺れがおさまったあとに降り始めた雪に身を縮めていました。誰もがあの時を思い起こしていました。
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4人のソリストが加わり「レクイエム 死者のためのミサ曲」の演奏が始まります。葬列の重い足取りを思わせる序奏に続いて、『主よ、永遠の安息を彼らに与え、絶えざる光で照らしてください』合唱が歌い始めます。

合唱団は盛岡、山形、仙台から参加した混成チーム。しかし、人数はコロナ禍以前の半分以下の50数人に減りました。全員がマスクを着用。オーケストラとの間には飛沫感染防止のため、透明のパーテーションをたてました。
歌唱には最悪の条件です。しかし、歌声はパーテーションを隔てた私たちオーケストラはもちろん、ホール全体に響きわたりました。合唱団の方々の熱意、祈りがマスク、パーテーションを突き抜けたのです。

オーケストラは私が所属するアマチュアの仙台シンフォニエッタを主体に仙台フィルや、山形交響楽団の奏者が加わりました。人数は以前より10人程度少なくなりましたが、その分「お互いに聴き合う」という基本に立ち返られたと思います。

4人のソリストはいずれも東北の各地で活躍されています。あの日のできごとを身近かに体験した方々ならではの想いが歌声にこもっていました。

「怒りの日」、「不思議なラッパ」、「恐るべき王」、「覚えていてください」、「呪われた者」と歌い継いで「ラクリモーサ=涙の日」。

『それは涙に暮れる日、慈しみ深き主 イエスよ、彼らに安息を与えてください』すすり泣くようなヴァイオリンにのって合唱が繰り返す祈りの向こうに、震災がもたらした多くの悲しみや、苦しみを私たちは思い浮かべていました。これは11年経とうと決して癒されるものではないのです。加えて理不尽な戦乱に苦しむウクライナの人々の悲しみを思い浮かべていたのは私だけではないでしょう。

死の床にあったモーツアルトの筆はここまでで息絶えました。人はやはり祈るしかない。この天才作曲家はこのことを知っていたのです。「アーメン」のコードをそんな想いをこめて弾き切りました。


レクイエムの後半は弟子のジェスマイヤーが残されたスケッチなどをもとに仕上げました。
「感謝の讃歌」、「神の子羊」などと続き、神の許しを願うフーガ。『あなたは慈しみ深いのですから quia pius es』締めくくりの祈りを感慨をもって弾き切りました。
演奏終了時の拍手は一切ご遠慮いただき、最後はやはり全員の黙とうで1時間余のコンサートを終わりました。
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感染予防のため定員を半分に制限した会場の電力ホールには300人を越える方々が足を運んでくれました。客席とステージが心をひとつに、祈りをともにすることができました。

来年の3月11日は私たちが目標としてきた10回目、最後のコンサートとなる予定です。「震災を忘れない、忘れさせない」という願いはもちろんそれで途絶えるものではありません。(了)






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