5月19日 仙台市蒲生干潟 9年ぶりに春の自然観察会 希少な渡り鳥確認

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国指定の鳥獣特別保護地区・蒲生干潟で自然観察会が開かれ、親子連れなど100人余が参加した。市民グループの「蒲生を守る会」の主催。

冒頭の写真はハマエンドウの群落を観察する参加者。砂浜をはうように紫色の花を咲かせていた。
説明役の「蒲生を守る会」の熊谷佳二さん;「普通のエンドウは蔓(つる)で上へ伸びていきますよね。ハマエンドウは風に飛ばされないよう砂浜をはうように生えるのです。小さな実がなりますよ」。
子どもたち;「へえ、食べてみたいな」。

東日本大震災前は季節ごとに年4回の観察会を開いていた。市の中心部と結ぶバス路線が廃止されたことなどから、震災後は夏1回だけの観察会だった。今回はスポーツ用品メーカー・パタゴニアの支援で仙台駅と結ぶバスを走らせて実現した。9年ぶりの春の観察会である。

アサガオに似た花を咲かせるハマヒルガオや、ハマナス、タンポポを小型にしたようなハマニガナなどがちょうど花を咲かせる時期にあたっていた。ハマニガナの茎をかじってみると名前通りの苦さだ。このほかコウボウムギや、ハマニンニク、ハママツナなど多くの海浜性植物を見ることができた。

これらは震災の津波で砂ごと流されたものだ。回復は難しいのではとの見方もあったが、自然の回復力は目覚ましかった。すっかり姿を消したアシ原も所々に戻りつつある。震災から8年、干潟の植生は震災前の姿に一段と近くなっていた。
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写真上;ハマヒルガオの群生。下;野鳥の観察。
希少な渡り鳥が多く観察できたのも今回の収穫の一つだった。
南半球で冬を過ごしたシギやチドリなどの渡り鳥は、北に移動して夏の間シベリアなどの営巣地で子育てをする。旅の途中で立ち寄って栄養補給するのが日本列島各地の干潟や沼。蒲生干潟は彼らにとって有力な「給油所」の一つだ。

「あっ、あそこにシギが」、会のメンバーが声を上げる。野鳥の専門家はやはり目がいいのだ。望遠鏡をセットしてくれる。キアシシギがはるか先の水辺で長い口ばしで砂浜をつついている。足が黄色なのでこの名がある。大きさは専門家に聞くと体長25センチほど、ハトよりやや小さいという。

チョウシャクシギも確認できた。口ばしは下に向かって曲がって伸びている。砂の中のカニなどを捕食するのに都合がいいのだ。大きさは40センチほどだというから、ハトよりかなり大きい。
守る会の佐場野裕さん(72)によると、この日は渡り鳥を8種類、それ以外の野鳥もミサゴなど8種確認できた。
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写真上:アカウミガメの甲羅の一部。下:ウミニナ、巻貝の一種。
30センチほどの平らな甲羅を見つけた参加者がいた。守る会のメンバーによるとアカウミガメの甲羅の一部ではないかという。仙台湾岸など三陸沿岸には死んだアカウミガメが漂着することが多いという。
水の引いた砂浜から小さな巻貝を掘り出した子どももいた。長さ3センチほど、ウミニナと見られる。地方によっては食用にするところもあるが、減少し環境省が準絶滅危惧種にしている。子どもは科学者だ。観察会のルールに従って元の場所に戻した。
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写真:遠くの白いコンクリートが内陸と干潟をへだてる7,2メートルの防潮堤。
観察会を主宰した熊谷佳二さんはこう話した。
「震災で蒲生干潟は壊滅的な被害を受けた。しかし、干潟の自然はこれほどまでに回復した。人間の復興を支えるのは自然だ。自然との共生を考える場として干潟を守っていきたい」。

東北大学教授の長谷川公一さん(環境社会学)は初めての参加だという。一昨年10月に操業開始した石炭火力発電所・仙台パワーステーションの操業停止を求める原告団の代表でもある。干潟からおよそ800メートルの距離にある発電所は日曜日のこの日も煙を吐き出していた。
「電力は首都圏に送られ、儲けは関西電力・伊藤忠商事という関西の財界に。環境汚染だけを仙台に置いていくのは許しがたい。排煙に含まれる窒素酸化物や微量の水銀が、私たちの宝といえる蒲生干潟を汚染するおそれがある。みんなの力で操業停止させよう」。長谷川さんはこうあいさつした。

蒲生干潟の自然観察会は7月28日(日)にも開かれる。(了)

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