11月18日 仙台市新浜 「松葉さらい」 海辺の暮らし50年ぶりに再現

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写真;落ち葉をかき集めた「ツクネ」
宮城野区新浜地区。海辺のこの集落ではクロマツの海岸林に住民が総出で入り、枯れ落ちた松葉を集める「松葉さらい」が春と秋、年2回の恒例行事だった。風呂やカマドの燃料に利用するための欠かせない行事だったが、昭和30年代後半には途絶えた。プロパンガスや灯油の普及という燃料革命のためである。
地元の町内会と民間団体の「貞山運河研究所」の主催で、松葉さらいの再現が実現し東北学院大学の学生や住民たちおよそ50人が参加した。
初めに、東北学院大学の菊池慶子教授(日本近世史)が、地元の方々から聞き取りの結果を説明した。菊池教授は新浜地区の地域再生を研究者の立場からサポートしており、仙台湾岸の海岸林の歴史についての著書もある。(注1)

新浜地区では松葉さらいに入るクロマツの海岸林を「山」と呼び、地区の住民を「北組」「中組」「西組」の3班に分けて共同作業を行っていた。3班が入る「山」は毎回ローテーションで変わり、各班の住民はクジ引きで作業場を割り当てた。
集める松葉が公平に行きわたるようなシステムが確立していたのだ。

松葉さらいを再現するクロマツ林に向かった。かつての「山」は貞山運河の海側だったが、ここの海岸林は根こそぎ津波で流された。運河の手前には江戸時代に植林が開始された松林があり、この場所で奇跡的に流されなかった100本弱のクロマツ林が実験所となった。
宮城県農林水産部によると宮城県では仙台湾岸をはじめ合わせて1000ヘクタールの海岸林が流された。大津波に耐えて残った林もわずかにあり、地下水位より3メートル以上の土層がある場所に生えていたマツは残ったという。たしかに、隣接する場所に住民たちが整備した「ビオトープ」では、35メートルほど掘ったら地下水が自噴したという。この一帯は地下水位が低いことがうかがえる。
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写真上;奇跡的に残ったクロマツ林。下;ツクネ棒を使ってマルに仕立てる。
町内会の顧問、瀬戸勲さん(76)が松葉さらいをやって見せた。
竹の熊手で林床をかいて枯れた落ち葉を集める。高さ30センチ、長さ60センチほどにかき集めたのを「ツクネ」と呼ぶ。ツクネ3つをまとめて縛りあげたのが「1マル(ひとまる)」。
縛り上げるのは50センチほどのイナワラの束を3本結び合わせた「ツナギ」。ツクネをすくい取ってマルに仕立てる際は「ツクネ棒」を使う。5~60センチほどの2本の雑木の枝をわら縄で繋いだものだ。マルの上下には雑木の枝を5~6本置いて押さえとする。

このマルを3つ、荒縄で背負って運ぶ。力自慢の男は5マルも背負ったものだ。瀬戸さんはこう話す。
この日は3マルを若い学生さんが背負い、歩いて10分ほどの「ビオトープ」まで運んだ。

松葉をさらい終わった林床はきれいになり、日差しも差し込む。多くの植物の生育を促し、クロマツの生育も助ける。林のあちこちに生えるキンタケやショウロなどのキノコも住民たちには楽しみだったという。生活の必要から続けていた松葉さらいが結果として海岸林の維持・管理に貢献していた。

50年ぶりに再現された「松葉さらい」。使われる道具はいずれも身近なものを利用したもの。暮らしのなかの知恵が生み出したものばかり。50年前まであった海辺の暮らしの一端を眼にするのは、参加者のほとんどが初めて。地区の住民でも若い世代は初めて見る光景だった。
菊池慶子教授は「博物館へ行っても見られません。重要無形民俗文化財と言ってもいいものが見られた」と感嘆の声をあげた。
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写真上;マルを背負う。下;菊池慶子教授。
さらった松葉を燃料にヤキイモを楽しんだあと、ミニ・ワークショップが開かれた。
海岸林が流された沿岸部では、林野庁や県、自治体、それに民間団体がクロマツなどの苗木を植えて海岸林再生に取り組んでいる。数10年後には樹高10~20メートルの海岸林が再生するはずだ。ところが沿岸部のほとんどが災害危険区域に指定され住民のいない地区になった。かつては海岸林の維持管理の担い手だった住民不在なのだ。
維持管理だけでなく、燃料としての用途はなくなった。「松葉を利用するアイデイアは?」。ワークショップのテーマだった。
「キャンプ場として開放し、松葉さらいゲームで速さと量を競う」。「ペレットとして成型し販売する」。「燃料として燻製ソーセージをつくる」。
若者らしいアイデイアが出た。
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写真;松葉を燃やしヤキイモを楽しむ。
菊池教授はこう話した。「海岸林の維持管理をどうするのかは大きな課題だ。松葉をペレットに加工して燃料や緑化の材料に利用する研究が一部で始まっている。海岸林を資源に地域に新しい産業をつくり出すことも考えてなければならない」。

50年ぶりに再現された松葉さらいは、被災地の抱える新たな課題を私たちに気づかせてくれた。(了)
*注1:菊池慶子「仙台藩の海岸林と村の暮らし」(よみがえるふるさとの歴史シリーズ・10)蕃山房。

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