3月26日 石巻市雄勝 ”地域への愛 花を通じて”~ボランテイアも手助け

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北国でも梅の花が開き始めた。薄いピンクの花の下この日、石巻市雄勝地区の一画にはボランテイア・グループの歓声が響いていた。徳水博志さん(61)、利枝(りえ)さん夫妻が営む雄勝花物語「ローズファクトリーガーデン」。NTT東日本傘下の各社から休暇を取ってやって来た20人ほどが、芝生張り作業に汗を流した。
芝生を1枚ずつ敷いたあと、腐葉土を入れ、水をまいた。ガーデン内に設えられたブランコは、芝生をこすらないよう椅子の釣り手を短く調節した。芝生の後はハーブ畑。イタリアン・パセリや、ミントなどの新芽が出始めた。新芽の成長を妨げないよう、枯れた葉っぱを一つずつハサミで取り除く。新芽を傷つけないよう、結構気を使う作業だ。
作業は1時間半ほどで終わった。徳水利枝さんお手製のハーブ茶を皆んなでいただいた。
ある女性は「こうして身体を動かすのは楽しかった。何より、震災から4年というのに一向に復興がすすんでいないことに驚いた。これからも関心を持ち続けたい」と話した。
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「ローズファクトリーガーデン「は広さ1、750平方メートル、530坪。国道398号線を北上川方面から下りてくると、直角に左側に曲がる角にある。もとはと言えば、利枝さんの実家の敷地だった。2011年3月11日、雄勝町の中心部は高さ19メートルの津波に呑み込まれた。実家は流され、当時83歳だった母親、叔母、いとこの3人が犠牲になった。あたりはがれきだらけ。公民館の屋上には観光バスがのっていた。

震災の年の夏、跡地のがれきをどけて花を植え始めた。亡くなった肉親を慰めたいとの想いからだった。一面がれきの寒々とした光景に心を痛める人も、咲き始めた花に慰められたと言ってくれた。花畑はふるさとを失いかけている雄勝の住民をつなぐ絆にもなると思いあたった。
種子や球根を提供してくれる大学の研究室や、園芸会社。ボランテイアグループの労力奉仕。支援の輪は次第に拡がった。昨年、一般社団法人「雄勝花物語」を立ち上げ、被災地の緑化支援ト被災者の支援活動をすすめる体制を整えた。

具体的には個人や団体にボランテイア活動の場を提供するほか、花を使った製品を作るための教室を開く。被災体験を継承するため、語り部活動や防災についての研修会を開く、といった活動だ。昨年から1か月に3~4団体がボランテイア活動に訪れるようになった。
ガーデン内にはプレハブつくりながら会議や研修会場となる建物や、ガーデニングでつくったグッズを販売する建物もできた。ミニ東京駅を思わせるしゃれた建物では、ラベンダーやローズの香袋、押し花ストラップなどを販売する。
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徳水さん夫妻。写真下はビオラのガーデン。
春一番で咲く色とりどりのビオラがガーデンを飾っていた。このあと、チューリップ、バラが次々に花を咲かせる。
去年の秋からオリーブの試験栽培をしている。香川・小豆島の農業者の協力をえた。葉が一部枯れているのが気になるが樹勢はまずまず。雄勝の気候に合うことが分かれば、主力作目の一つにしたい。

雄勝地区のかつての中心地には小中学校をはじめ、公民館、雄勝硯伝統産業会館などが建ち並んでいた。これらはすべて取り壊され、広大なさら地が拡がる。海藻を使って健康食品を製造する会社と、太陽光パネルの会社の立地が決まっているが、これらを除けば土地をどう利用するか白紙の状態だ。
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ガーデンを運営するだけでなく、徳水さんたちは震災体験を継承する語り部でもある。作業に先立って防災教室が開かれた。
震災当時、徳水さんは雄勝小学校の教師だった。小学校では地域の人の意見を取り入れて、避難マニュアルに従って裏山に避難することを決めた。子どもたちを裏山の神社に、さらに高い場所へと避難させ全員が無事だった。避難マニュアルを関係者が共有することが大事。講師役の徳水さんはこう強調した。
また、雄勝で犠牲者が多かったのは、海から一番遠い地区だった。ここは、1960年のチリ地震津波でも津波が来なかった地区だった。経験知にとらわれることの危険性を徳水さんは指摘した。

参加したNTTの社員からは「各地にあるNTTの施設が災害時に、被災者を受け入れられるようどうすべきか、平時から考えておく必要を感じた」といった、意見が出された。災害にどう備えるか?気付きはやはり、こうして被災地へ足を運ぶことから生まれる。

徳水さんたちはローズファクトリーガーデンの後背地に、大きな農園をつくれないか構想をあたためている。花やハーブだけでなく、オリーブや野菜を栽培して出荷体制を整える。ふるさとを去った若者たちを呼び戻す、雇用の場になることも夢ではない。

『大切なのは地域への愛です』。「持続可能な雄勝をつくる住民の会」の事務局長でもある徳光さんはこう強調した。夫妻はいまは石巻市の中心部の見なし仮設住宅に暮らしているが、雄勝地区につくられる復興公営住宅ができればそこに居を定めるという。
咲き誇る花が育む地域への愛。被災地再生の夢を紡いでいく。(了)


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