10月8日~1 仙台市・井土生産組合  被災水田で稲刈り~経営基盤強化へ研修生受け入れも

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仙台市若林区の農業生産法人・井土生産組合。1ヘクタールの大区画に整備された田んぼで、大型のコンバイン3台がエンジン音を響かせてiいた。ヒトメボレの稲刈りだ。震災後初めての収穫作業だが、稲の多くが倒伏している。台風18号の影響かと思ったが違うという。生育が良すぎて穂が重いので倒れたのだ。
確かに草丈は通常より5センチほど高い。例年よりこの夏は高温だった。それ以上に大きかったのは田んぼの土。除塩のため表土をはぎ取って客土した。その土とは初めての付き合いだ。栄養分がどの程度なのか見当がつかない。何か所かデータをとった。予想外に栄養分が高く、肥料は通常の半分程度に抑えたという。それでも生育は予想を越えた。新しい土となじむには数年はかかるという。

仙台平野では国が圃場整備をすすめているが、井土生産組合は前倒しの実施を要望し受け入れられた。稲刈りのすすむ田んぼは震災前は1区画10~30アールだったのが、1ヘクタールの大区画に整備された。コンバインの作業効率は格段に上がった。田んぼに水を入れるのもパイプライン方式になったので、いちいち水路を板で仕切るなどの手間がななくなった。バルブの開け閉めだけで水管理は容易になったという。

井土生産組合を訪れたのは2か月ぶり。そのたびに大きく姿を変える。事務所のすぐ隣では鉄骨づくりの「六郷ライスセンター」の工事がすすめられていた。仙台市やJAとの共同事業。1、200トンの米を収納・管理できる施設だ。10月末完成予定が、資材不足などで2か月遅れた。このため、収穫した米は2キロメートルほど離れたライスセンターに運んでいる。
井土生産組合では今年は去年のほぼ3倍、65ヘクタールの水田に米を作付した。22ヘクタールで大豆を栽培。ハウスではミニトマトの生産を続けているほか、冬場はコマツナ、ユキナなどに切り替える。今月中にタマネギを2ヘクタール定植する。
多品種経営のねらいは農作業を年間通じて平準化し、農業経営を安定させることにある。井土生産組合は着実にその途を歩んでいる。さらに新しい取り組みがあった。
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今月からは就農を目指す研修生2人を受け入れた。農業後継者を育成するため仙台市が始めた事業の一環だ。その一人、天野一輝(かずき)さん(24)は露地栽培のサニーレタスとグリーンカールの収穫の研修を受けていた。レタスの仲間で緑色に育ったグリーンカールを一株ずつ刈り取り、余分な葉を落として集荷する。
天野さんは仙台市泉区在住。飲食店の調理を担当していた。農業とは無縁だったが、仕入れで市場へ行き農作物を自分で作ってみたくなったという。研修制度に応募し、4月から6か月間同じ若林区内の農業法人で研修を受けた。米だけでなく野菜の栽培にも取り組んでいる井土生産組合を希望してやってきた。ここで半年間研修を受ける。

できれば、ここで就農したいという。自分で育てたものが商品として出荷されていくのに喜びを感じると話す。農作業をどうすすめるかなど、すべてが組合員の話し合い、合議で決まるというのも新鮮だったという。指導役の副組合長・大友一雄さん(69)は「若いだけあってのみ込みが早い。将来性は十分」と太鼓判を押す。
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写真は研修中の天野一輝さんと、指導役の大友一雄さん。
井土生産組合は被災した15人の農家が「井土の農地を守ろう」と震災後に結成した法人だ。8人が理事で専業農家の立場。残る7人は勤めをもった兼業農家だ。土日などを中心に農作業に従事する。組合員の奥さんたち女性たちが、主に野菜やトマトなどの栽培を支える。

被災した農漁村では多くの生産法人が生まれた。もともと高齢化と後継者不足が大きな悩みだった地域である。大震災の大きな打撃を生き残る賢明な選択だった。最初の壁は法人経理だった。個人経営が基本だった農業・漁業者にとって企業会計はほとんど未経験の作業といえる。
鈴木保則組合長(53)にこの点を聞いた。鈴木さんは個人経営の当時から会計・簿記の知識があった。日々の会計帳簿は鈴木さんが担当する。もちろん専門家の眼も必要なので年に数回、税理士にチェックしてもらう。すべてを外部に任せたのでは意味がないという。日々の数字の動きが農業経営を考える大きな指標だ。鈴木さんはこう言い切った。
井土生産組合は、宮城野区内の生産法人から解雇された2人の女性を採用することも決めたという。被災農家が立ち上げた生産法人は、小さいながら地域の雇用の受け皿にも成長していた。
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鈴木保則さんはこう話す。
『農業の6次化と言われるが、簡単なものではない。まず農業経営を安定させることが大事だ。いま。サラリーマンをしている7人の組合員もいずれは定年を迎え、農業に専念することになる。さらに、研修生が私たちの仲間になってくれれば地域農業の将来は明るい』
井土生産組合の歩みは、仙台平野の農業の可能性を示している。(了)

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