8月31日  「水産特区 年内申請」を表明 ~ 反対の声よそに固執する宮城県知事

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写真は復旧工事すすむ女川漁港(2012年7月)。
宮城県の村井嘉浩知事がこの日、石巻市の宮城県漁協に足を運んだ。村井知事は漁協幹部と会い、「水産業復興特区」を、年内にも国に申請する方針を明らかにした。これは、漁協に与えられているr沿岸の漁業権を、民間企業にも開放しようというものだ。
震災直後に設けられた国の復興構想会議で村井知事が自ら提唱した。三陸の沿岸漁業はもともと高齢化と、後継者不足に悩まされていた。そこへ、震災の被害である。宮城県では1万2、000隻の漁船のうち9割が被害を受け、養殖施設も大きな被害を受けた。震災後、県漁協が行った組合員の意向調査では30パーセント近くが漁業をやめたいと答えた。
特区構想はこうした沿岸漁業を立て直すため、民間企業の参入を図り、活力を導入しようというものだ。
これに対して、漁協は採算重視の民間企業が参入すれば、漁業資源の枯渇や、漁場の荒廃が心配されると猛反対した。
強硬な反対にあった村井知事は、昨年8月特区の導入は2013年以降と表明した。漁業権の見直し時期にあたる、来年度まで先送りし、いったん矛を収めたかに見えた。
それから1年余、突如の方針変更である。”はやり”の決められる政治を目指したということだろうか。

これには訳がありそうだ。村井知事は漁協へ赴く前に、石巻市桃浦地区の漁業者が設立した「桃浦カキ生産者合同会社」を訪ねた。15人のカキ養殖業者が作ったもので、設立手続きが整ったばかりである。この会社にはこの後仙台市の水産卸会社が経営参加する。生産から、加工、販売まで手掛ける6次産業化を目指すという。
桃浦地区は漁協の支所の中では、ただ一か所水産特区の導入に賛成を表明していた。こうした事情から、宮城県をはじめ、生産者、卸会社の3者が水面下で交渉を続けてきた。
村井知事はこうした手続きが整うのを待って、行動に出たというのが本当のところのようだ。今月11日から始まる県議会には、こうした会社の経営支援をするための補正予算案も提出する。

漁協が特区構想に反対しているのはこんな理由からだ。三陸の沿岸漁業者は生産性は低いながら、豊かな資源を生み出す漁場をいとおしむかのように守り育ててきた。「森は海の恋人」を掲げて、植樹を続けている先進的な漁業者もいる。
ところが、採算重視の民間企業は資源を取りつくしかねない。また、漁場に愛着を持たない企業は採算が取れなくなると撤退する。漁場の荒廃が心配される。こうした懸念は充分理由があり、私も基本的には特区構想には反対だる。

ただ、沿岸漁業の再生を図るためには、家族経営が基本という伝統的な経営形態を続けるだけでいいのかという点については議論がある。船や養殖施設の多くを失った中から、立ち上がるためには協業化を図る必要もある、と私は考えている。生産者を支援する様々な補助金の受け皿としても、協業体の方が優位な立場にある。

漁場をよく知る地元由来の漁業者の協業体なら、資源枯渇や漁場荒廃などの恐れはない。本ブログで何度か紹介
した、南三陸町志津川地区で若手の漁業者12人が作った「南三陸漁業生産組合」がその代表選手である。(本ブログ2月13日、7月23日の項)昨年暮れの設立以来、彼らは順調な経営を続けている。勿論のこと、特区制度でなく現行の制度の中で充分な実績をあげている。

村井知事が持ち出した桃浦カキ生産者合同会社、球筋としてはやや微妙である。
地元由来の生産者の協業体であり、参入を認めないというには理由が乏しい。ただ、会社を作った15人は現に漁業権を持っているはずだ。あえて、特区制度によらずとも、今の制度内で充分実績をあげることが可能である。志津川の例を見るまでもない。

しかし、村井知事の本音、こだわりは特区制度を何としても導入したいということにあるようだ。とすれば、今回を突破口に、今後は地元に縁のない企業が進出する事態が考えられる。それは沿岸漁場の荒廃につながる恐れをはらむ。松下政経塾の優等生、新自由主義の信奉者、村井嘉浩知事ならではのこだわり、固執と言うべきか。
そこには、長年にわたって三陸の好漁場を守り育ててきた、漁業者たちに寄り添う想いはみじんも感じられない。

長年育まれてきた浜の絆と、環境が破壊され、混乱を招く。宮城県漁協はあくまでも反対の態度を変えない。水産特区問題の行方は予断を許さない。(了)

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