8月18日 仙台市荒浜   ”地域再生の願い”のせ 貞山堀で灯篭流し

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仙台市若林区荒浜、周りに廃墟の原が拡がる貞山堀で、送り盆の行事灯篭流しが行われた。荒浜町内会などが主催した。毎年、この時期に灯篭流しが行われてきた。住民にとって憩いの水辺だった貞山堀が会場。
堀に流れ込んだ瓦礫などは片付けられたが、水辺の並木は姿を消してしまった。せめて集まった方々の安全を確保しようと、「荒浜再生を願う会」のメンバーが転落防止用のロープを堀端に張ってこの日に備えた。
午後4時、おもいおもいの和紙で作った小舟を手にした住民およそ100人が参加した。
荒浜地区では、180人余りが震災の犠牲となった。灯篭には亡くなった肉親を悼む言葉や、地域再生の願いなどが書かれている。
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いつもならこの行事は夜に行われ、灯篭のほのかな灯りが黒い水面を照らした。しかし、周りには街灯などが一切ない。明るい内の灯篭流しとなった。ゴムボートで協力してくれた、消防局の隊員たちが押し出すと、人々の想いを込めた灯篭がゆらりと貞山堀をただよった。
仙台市内の建て売り住宅に移り住んだという60歳代の女性に聞いた。
「震災直後の去年もこの行事をやりましたが、今年の参加者はやや減ったようです。皆さん、あちこちの仮設住宅などに住んでいますので、時間が経つにつれてつながりが薄れているのでしょうか?」
しかし、伝統の行事を守り続けることで、ふるさとへの想いをつなぎ止めたい、これが住民たちの願いだ。来年は、お寺の住職を招いての供養式も一緒にやりたいという。

一面、住宅の土台や半壊した建物が残るこの地区に「珈琲」の看板があった。
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それは、灯篭流しの会場から南におよそ500メートル、県道塩釜・亘理線沿いにあった。2階建ての住宅に「希望」という看板。玄関を開けると「いらっしゃい」の声がかかる。8畳ほどの部屋にテーブルが2脚。この日は荒浜の元住民のご夫婦と、県道を仕事で行き来しているうちに看板が目にとまったという岩沼市の男性客がコーヒーカップを手にしていた。
店主は関内祐子(せきうちゆうこ)さん(58)。荒浜一帯は仙台市が災害危険区域に指定したため、住宅の建設ができない。この家も新築した訳ではない。幸い流されずに残ったのを修復した。
3月11日、祐子さんは年老いた義父をデイケア施設に送りに行って、たまたま留守にしていた。津波は2階の胸のあたりまできた。ドアや窓は破壊された。しかし、建物は流されずに残った。土台がしっかりしていたのと、庭先に折り重なって流れ込んだアカマツが、防波堤の役割を果たしたのではと祐子さんは言う。

高圧洗浄で壁や天井のヘドロを取り除き、内装を施した。当初は主にボランテイア作業の人々の休憩場所に使ってもらっていた。今年の5月、食品衛生法の営業許可を取り喫茶店を開店した。水道や電気を引いてもらった。下水道も使えるようになった。
荒浜小学校のそばで生まれ育ったという祐子さん。何もかもなくなったこの地区に、この店を続けることで少しでも明るさを取り戻したいと言う。我が家一軒のために手紙を届けてくれる郵便屋さんに感謝だとも。
県道のかさ上げ工事が始まると、敷地はのり面にかかるので営業はそれまでだという。

仙台市は荒浜地区の集団移転事業を急いでいる。しかし、移転に異を唱える住民グループもいる。元の住宅地にかかる抵当権が足かせとなって移転が困難な住民も多い。地域再生の未来像が見えない中で、ただ一軒の喫茶店は小さいながら住民たちに希望の灯をともしてくれる。(了)

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