4月27日 名取市閖上地区 地域の再生をどう進めるか? 真剣に議論交わす行政と市民
名取市の「閖上(ゆりあげ)復興100人会議」が開かれた。市が作った復興計画について広く市民の意見を聞こうというものだ。午後7時、会場の名取市文化会館には300人を越える市民が集まった。
閖上地区は豊富な海産物が水揚げされる漁港を中心に発展してきた。震災前には7300人が住んでいたが、高台が近くにない平坦な地形だったこともあり、740人余りが死亡した。
多くの住民が車で避難したが、内陸へ向かう道路が大渋滞となり、被害を拡大したとも指摘されている。
この閖上地区の復興について、名取市は土地区画整理事業による、現地での再建方針を決めた。
津波の浸水区域を災害危険区域に指定し、集団移転を促す方式を取った隣接の仙台市などと際立った違いを示す。
現地での再建といっても、すべての区域を居住可能とするのではない。
具体的に見てみよう。
津波に備え、海岸と名取川沿いに7,2メートルの防潮堤を築く。これを第一次防御ラインとする。さらに海岸から1キロ内陸を南北に走る貞山運河(ていざん)の護岸を6メートルかさ上げして、第二次防御ラインとする。
シミュレーションでは第一次防御ラインは、150年に一度来襲する津波に耐えられる。第二次ラインは1000年に一度とされる、今回の規模の津波に耐えられるという。
その上で貞山運河より海側の区域、42ヘクタールは非住居区域とし水産加工などの産業施設や、マリンスポーツ施設などを配置する。運河より内陸側の80ヘクタールを住居区域とする。地盤を全体として3メートルかさ上げして、海側に住んでいた住民も含め区画整理の換地方式で移転してもらう。
これが、名取市が選択した区画整理事業による復興計画だ。
この日の会議では津波に耐えられる避難ビルを5か所に建設し、食料などを備蓄する。震災時に交通渋滞が問題となった道路は拡幅したり、立体交差にして避難路を確保するなどの対策も説明された。
住民との意見交換では、名取市が提案する区域では不安だ。もっと内陸へ移転したいといった発言が相次いだ。
ある女性は「私たち子育て世代は、もっと安心できる環境で生活したいと望んでいる。仙台東部道路より西側へ移転する選択肢も考えて欲しい」と発言した。
仙台東部道路は海岸から3キロほど内陸を走る高速道路。高さ6メートルほどある。今回の震災で平坦な平野部が拡がる仙台市以南の地域では、津波はこの東部道路まで押し寄せた。東部道路が結果として、住民の避難場所や防波堤の役割を果たした。
名取市でも無傷だったのは東部道路より西側だった。
これに対して名取市はこう説明した。
二重の防御ラインで守られた貞山運河の西側の地域では、今回の震災規模でも津波は50センチ程度に押さえられる。防御策を講じても安心できないという気持ちは理解できる。しかし、個別の事情を優先して考慮すると、閖上とい地域を再生させたいという目標の達成が難しくなる。
近く、二重の防御策を講じた上、かさ上げした地盤に住宅を建てるとどうなるか、実物大のモデルを作る予定だ。
津波対策が実際にどんなものかを実感してもらいたい。名取市は住民の疑問にこう答えた。
今年2月に行った住民意向調査で、閖上地区に引き続き住みたいという希望は38%だった。一方、「場所にこだわらない」や「その他」の回答は60%に上った。
古くから住んでいる世代ほど地元への愛着が強い。海産物の「閖上ブランド」への誇りもある。閖上をなくしてはならないという願いにつながる。
これに対して、子育て世代や、身内を失くした住民を中心に、安心できる内陸への移転を希望する声が強いという。
どちらも。住民の偽らざる気持ちだ。否定することはできない。
会場で40歳代の男性に会った。建築関係の会社経営者で、閖上地区にあった事業所を流された。自宅は仙台市の荒浜でそこも流された。仙台市は集団移転を迫るが、彼は異を唱え現地での再建を希望している。
名取市の復興事業についてこう話した。市側の提案に賛成するかどうかは別にして、住民への説明をきちんと行っている。異を唱える住民の声を聞こうとしない仙台市とは天と地ほども違う。
午後9時終了の予定が会議は40分も伸びた。
終了間際、佐々木一十郎(いそお)市長がマイクを握った。皆さん、閖上のまちを好きですか、嫌いですか?私は大好きです。現地復興にこだわるのはこの街をなくしたくないからです。勿論、安心できる内陸への移転希望を無視はしません。新たな選択肢を検討したい。
しかし、いったん別の場所に移った人も戻ってきたいと思える、魅力ある街を作りたいのです。
自分の言葉で語る姿勢は納得できるものだった。集団移転一辺倒で、住民の声に耳を貸そうとしない仙台市や、
石巻市、山元町などの首長との違いは明らかだった。(了)
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