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zoom RSS 3月11日 ”7年目の祈り” モーツアルト・レクイエムで捧げる

<<   作成日時 : 2018/03/15 13:37   >>

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写真はいずれも,前東北大学医学部教授・湯浅涼さん撮影。2018年3月11日、仙台市・電力ホール。
あの日から7年、今年も私たちは「祈りのコンサート」を開催し、会場を埋めた皆さんとともに犠牲者を追悼し、地域の再生を祈った。想像を絶する激しい揺れに見舞われた午後2時46分、客席、ステージの全員が黙とうを捧げた、
「震災から7年、今年小学校に入学する子どもたちは震災後に生まれました。記憶が薄れるは避けられないのかも知れません。しかし、愛する人を失った方々の悲しみや、苦しみは今なお癒されることはありません。福島では、多くの人々が故郷に帰れず避難生活を送っています。このことを忘れてはなりません」。
実行委員会の高坂知節委員長のあいさつに、誰もが7年前のあの日をまざまざと思い起こしていた。

電気の消えた街には、あちこちでサイレンの音が鳴り響き、小雪の舞う底冷えのする空気を揺らしていた。携帯ラジオは大津波が沿岸部を襲い、多くの人々が犠牲になったことを伝えていた。
灯りの消えた仙台の夜空には美しい星空がまたたいていた。この世のものとも思えなかった。人間の無力さを思い知らされた。そのとき、人は祈るしかないことも。

「アヴェ・ヴェルム・コルプス」を弾き始めた。モーツアルト晩年の傑作のひとつ。
『めでたし、まことの御身よ』、合唱が静かに歌い始める。『どうか私たちと結びついていてください。臨終の試練の時には』。
静かな祈りが会場を包んだ。今回も拍手は一切遠慮してもらった。

続いて、モーツアルトが死の床で書いたレクイエム・死者のためのミサ曲、K626.
オーケストラが葬列の歩みを思わせる短い序奏を奏でる。合唱と4人のソリストが『主よ、永遠の安息を彼らに与え、絶えざる光で彼らを照らしてください』と歌い始める。
「キリエ・エレイソン=主よ、憐みください」は、祈りがフーガの形で交錯する。
「デイーエス・イレ=怒りの日」は、嵐のようなテンポで歌い、弾き切った。無力な私たちは、ひたすら救い主の前に頭を垂れるしかない。

指揮・音楽監督は岩手大学名誉教授の佐々木正利さん。バッハ;クリスマス・オラトリオのエヴァンゲリスト(福音史家)で、ヨーロッパの楽壇にデビューしたあと、東北の各地で多くの合唱団を育てているマエストロだ。
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4人のソリストはいずれも佐々木正利さんの門下生で、東北の中学・高校の現役の教員である。今年が日曜日に重なったため、授業を休むことなく初めて実現した。震災当時、沿岸部の中学校に勤務していた方もいる。若手と言える4人の歌声は伸びやかで、会場に響き渡った。

合唱団は仙台、盛岡、山形の6団体を中心に総勢143人。はるばる大阪や東京から参加した方もいる。
オーケストラはアマチュアの仙台シンフォニエッタを主体に、仙台フィルハーモニーなどの奏者に加わってもらった。メンバーは54人。私は今年もコンサートマスターを務めた。

「チューバ・ミルヌム=不思議なラッパ」、「レックス・トレメンダス=おそるべき王」、「リコレダーレ=覚えていてください」、「コンフュータテイス=呪われた者」に続いて、「ラクリモーサ=涙の日」。曲のヤマ場はやはりここだ。

すすり泣くようなヴァイオリンの音型にのって、合唱が『それは涙に暮れる日。裁かれるために罪ある人が灰の中から甦る日』と、静かに歌い出す。そして祈る。『ですからこの人は赦してください、神よ』。
短い間奏のあと、合唱が悲痛な祈りを捧げる。『彼らに安息を与えてください。アーメン』。大震災の多くの犠牲者の救いと、生き残った私たちの慰めを求め「アーメン」のコードを弾き切った。

モーツアルトの筆はここまでで息絶えた。以下の部分はスケッチなどを基に弟子のジェスマイヤーが仕上げた。
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「祈りのコンサート」は震災を忘れない・忘れさせないとの想いから始めた。今回で5回目。出演者はソリストを含めボランテイア奉仕である。できるだけ多くの方々と祈りを共にしたいとの趣旨で入場は無料とした。今回はサントリー芸術財団の助成金をもらったが、経費の多くは個人や、企業・団体から募った支援金で賄っている。

聴衆は回を追って増えてきた。日曜日に重なった今回は、お出でになった方を断るなどの混乱を心配した。私の古巣・NHKでイベントを手掛けてきた元同僚のSさんに協力を要請した。手弁当で駆けつけてくれた。「のど自慢」 などの運営に関わって来た方である。訪れた方々に整理券を発行するなどの新しい方式で、心配した混乱はなかった。満席近い聴衆の方々と祈りを共にできた。
コンサートはこうした方々の努力で成り立っている。

「アニュス・デイ=神の子羊」、そして神の許しをこうフーガで1時間近いレクイエムは終わった。
指揮の佐々木正利さんがマイクを握った。「被災した方々の心の復興はまだまだです。このlコンサートは少なくとも10回は続けたいと思っています。これからも祈りを共にしてください」。
ふたたび全員が黙とうして、5回目の「祈りのコンサート」は終わった。

日本社会の関心は2年後の五輪に移りつつある。福島の方々の苦悩などなかったかのように、原発の再稼働を急ぐ安倍政権や経済界。
ホールを埋めた深い祈りは、追悼と再生を願うだけでなく、震災や原発事故を忘れ去ろうとする風潮への抗議でもあった。
私たちは、来年もここでレクイエムを演奏する。(了)



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