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zoom RSS 3月11日  ”6年目の祈り” モーツアルト・レクイエムで捧げる

<<   作成日時 : 2017/03/21 04:43   >>

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写真はいずれも、前東北大学医学部教授の湯浅涼さん撮影。2017年3月11日、仙台市・電力ホール。
6年目の3・11、今年も私たちは「祈りのコンサート」で犠牲者を追悼し、地域の再生を祈った。M9,0、あの巨大地震が発生した午後2時46分、客席、ステージの全員が黙とうを捧げた。『あの日は雪の舞う寒い日でした。その冷たい海水のなかでおよそ2万人もの人々が犠牲となり、200人余りがいまだに遺族の元に帰ることができません』。実行委員会の高坂知節(とものり)委員長のあいさつに誰もが、6年前のあの日をまざまざと思い起こしていた。
何かにつかまっていないと立っていられない経験したことのない揺れ。揺れが収まり我に返ると、あちこちで響くサイレンが小雪の舞う底冷えのする空気を揺らしていた。
想像を絶する大津波が沿岸部を襲い、一瞬のうちに多くの人々の命を奪ったことをその後に知った。

あの夜、すべての明かりが消えた仙台の夜空には、この世のものと思えない美しい星空がまたたいていた。私たちは人間の無力さを思い知った。そのとき人間は祈るしかないことも。

モーツアルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」を弾き始めた。4分ほどだが、晩年の傑作の一つ。『まことの御身(主、イエス・キリスト)は、十字架上で人々のために犠牲となりました』。静かな祈りが会場を包んだ。今年も拍手は一切遠慮してもらった。

続いて、モーツアルトが死の床で書いたレクイエム=死者のためのミサ曲、K626。
オーケストラの短い序奏に続いて、合唱と4人のソリストが『主よ、永遠の安息を彼らに与え、絶えざる光で彼らを照らしてください』。こう歌い始める。
続く、「キリエ・エレイソン=主よ、憐みください」は、テーマを各声部が歌い継ぐフーガ。
「デイーエス・イレ=怒りの日」は、嵐のようなテンポで曲を閉じた。無力な私たちは救い主の前にひたすら頭を垂れるほかない。
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指揮・音楽監督は岩手大学教授の佐々木正利さん。バッハのクリスマス・オラトリオのエヴァンゲリスト=福音史家でヨーロッパの楽壇にデビューしたあと、東北の各地で合唱団を育てているマエストロである。4人のソリストはいずれも東北出身の方々。
合唱団は仙台、盛岡、山形の6団体から総勢157人が参加した。オーケストラはアマチュア・オケの仙台シンフォニエッタを主体に、仙台フィルハーモニーなどの奏者に加わってもらった。メンバーは52人、私は今年もコンサートマスターを務めた。

仙台フィルの菊池公佑さんのトロンボーンが鳴り渡る「チューバ・ミルム=不思議なラッパ」。人々に目覚めよと呼びかける。
「コンフュータテイス=呪われた者」は、裁きの恐ろしさを表す主部に続いて、合唱がソット・ヴォーチェ(かすかな声で)で、『ひれ伏し、乞い願いながら私は祈ります』こう歌う。

そして、「ラクリモーサ=涙の日」。すすり泣くようなヴァイオリンの音型にのって合唱が『それは涙に暮れる日。裁かれるために罪ある人が灰の中から甦る日』。静かに歌い出す。そして祈る。『ですから、この人は赦してください、神よ。慈しみ深き主、イエスよ』。
短い間奏をはさんで、合唱がさらに悲痛な祈りを歌い上げる。『彼らに安息を与えてください。アーメン!』
大震災の多くの犠牲者の救いと、生き残っ私たちへの慰めを求め、ひたすらに頭を垂れるしかない。打ち震える心で「アーメン」を弾き切った。
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写真下;終演後の黙とう。
「3・11 祈りのコンサート」は震災を忘れない、忘れさせないの想いのもとに始めた。今回で4回目である。祈りをできるだけ多くの方々とともにしたいとの趣旨で、広く団体や個人から募った支援金で経費をまかない入場無料とした。出演者はソリストを含め全員がボランテイア奉仕である。
この日は土曜日と重なったこともあったが、1000人収容の仙台市・電力ホールは満員の聴衆で埋まった。

震災から6年、この国の社会の関心事は、大震災などなかったかのようにオリンピックに移ってきている。この日行われた政府主催の追悼式で安倍首相は「福島原発事故」に触れなかった。
少なくとも、この地仙台では震災を風化させまいとする想いの人々がこれだけ集まったことに意を強くした。

「アニュス・デイ=神の子羊」、そして神の許しを求めるフーガで1時間近いレクイエムは終わった。再び、全員で黙とう。
指揮者の佐々木正利さんがマイクを持った。
『6年経ってもなお苦しみの中にいる人々がいることに胸が痛む。演奏したレクイエムはキリスト教の音楽だが、神様でも仏様でも、あるいはご先祖様でもいい。私たちは祈り続けるしかない。このコンサートは少なくとも10年は続ける覚悟です。祈りを共にしましょう』。

震災から7年目に入った。しかし、津波や原発事故で家やふるさとを奪われた12万を越す人々がいまだに避難生活を続けている。あちこちで報じられる、慣れない地で暮らす福島の子どもたちへのいじめには怒りを覚える。
この日ホールを埋めた深い祈りは、追悼と再生の願いだけでなく、震災・原発事故を忘れ去ろうとする風潮への抗議でもあった。
来年も再来年も、私たちはここでレクイエムを演奏する。(了)
*写真の都合などでブログの執筆が遅くなりました。


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